初めて訪れたのにもかかわらず、日程は2泊3日。
これって、けっこう冒険だったのじゃないかと思います。
そのときは楽しみっていう方が大きかったけれど。
自分がどれくらいできるかも分かっていないし、そこがどういうところかも、ちゃんと分かっていなかったと思うし。
「こういう準備が必要で、これくらいの心構えで」みたいなことは教えてもらっていたけれど。
そういう準備をしてまで行った場所が、どういうところだったのかっていう。
そういうのも若さなのかなと思います。
声を掛けてもらって、出かけて行った秋の北アルプス。
初めてなことばかり。
持っていけるような道具もないし、荷物も持っていないし、それがどういうものかも分からないし。
連れて行ってくれた夫婦のお二人が、いろいろと教えてくれて。
実際に行動したり、何かが必要なときは息子さんが良くしてくれて。
なんとか入口まで辿り着くことができて。
あとは、言われるがまま、足手まといにならないように着いていくだけ。
初めての北アルプスで、初めての山小屋で。
日本一って言われる景色を見に行って。
それだけのものだから、やってくるひとも大勢で、山奥なのに、とにかく人がいっぱい。
そんな場所まで、よく行けたものだと思います。
2日目の夜なんて、ひとだらけの中で、どうやって眠りに就いたのか覚えていないです。
ただ、朝早くに起き出して。
みんなで東の空を向いて。
朝陽が昇ってくるのを見たっていうのは鮮明に覚えています。
ものすごく寒かったのだけど。
後ろにある山が真っ赤に見えて。
朝陽はとても眩しくて。
朝6時前だったと思います。

陽が昇ったら、山小屋でご飯を食べて。
あとは下りていくだけ。
準備を整えて、ただダラダラと時間を過ごしていたのだけど。
連れてきてくれた夫婦は、まだあたりを散策したいみたいで、カメラを持ってあっちこっち。
わたしはどこに行って良いかも分からないし、一緒に歩き回って疲れてしまうのも心配で。
山小屋の近くでボンヤリと景色を見てました。
息子さんは、そんなわたしに付き合ってくれて。
ご両親の夫婦に付いて歩いていくっていうのも気が引けたのかもしれないです。
ただ何を話すっていうこともなくて。
何か話さないと気まずいのかもしれないけれど、一緒に歩いて3日目だし、特に話題もなかったと思います。
それから、紅葉の景色を見るのにも飽きてきて、どういうキッカケだったのか忘れてしまったのだけど、山小屋へ戻ってみることにしました。
すごくたくさんの人で混雑していたのだけど、陽が昇ると、みんな出かけて行って、すっかりひとけがなくて。
後片付けをしている山小屋のひともいないみたい。
雑魚寝みたいに並んでいた布団が、ちょっと乱れた感じで並んでいるだけ。
置き忘れた荷物もなくて、外の賑やかさとは反対でした。
布団の上に寝転ぶと、3日目の疲れが吹き飛ぶみたいに、ノビノビできてすごく気分が良くて。
わたしがそんなことをしていたところに、息子さんも布団の上にゴロンとしてて。
背伸びをして両手をうーんと伸ばしたときに、同じようにうーんとしていた息子さんの手に触れたので、そのまま手を繋ぎました。
布団に寝転んで手を繋いで、顔を横に向けると、息子さんと目が合って。
自然と、その姿勢で唇を重ねました。
いつひとが来るかも分からない山小屋の中。
何度もキスをして。
歯磨きもちゃんとできていないのに。
お風呂に入ったのも1日目だけ。
お湯で擦っただけなのに。
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